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ハサミで「スマイル」を生む!
美容師のチカラでやさしい世界を

インタビュー

2016.06.21.Tue

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発達障がいの子どもたちに、私たちと変わらない「髪を切る楽しさ」を。

 

 髪をきれいにして笑顔になる理美容室を、恐怖に感じる子どもたち。ドライヤーやバリカンの音にパニックを起こし、じっとその場に座わることが苦手な発達障がいの子どもたちだ。

 

「どのように対応していいか分からない」

 

 入店を断った経験のある理美容室もあるだろう。途中で断念した理美容師もいるだろう。初めての経験で戸惑うのはごく普通のこと。だが、発達障がいの子どもたちにも「カットは気持ちいい」「髪がきれいになったら嬉しい」と感じられる方法があるのなら………。

 

 週5~6回、フルタイムのサロンワークの傍ら、発達障がいの子どもたちが美容室でカットができるようになる日までエスコートする「スマイルカット」を立ち上げた1人の男性美容師。2010年に活動を開始し、「スマイルカット」を全国に浸透させることに全力を注ぐ赤松隆滋さんだ。そんな彼が理事長を務める「特定非営利活動法人 そらいろプロジェクト京都」に「スマイルカット」について語ってもらった。

 

同じ目線で、同じ気持ちで

・発達障がいの子どもたちと向き合うことで一番大切にしていること何ですか?

――「なぜ、この子は嫌がっているのか?」と子どもの視点に立って考えること。子どもは純粋です。大人の基準や押しつけは通用しません。子どものいやがる理由を少しずつもみほぐし、スモールステップで歩み寄り、1つずつチャレンジしていく。そうすることで子どもたちは成長し、ヘアカットも自然と受け入れられるようになります。

 ・発達障がいについて学びを得ることは非常に難しいことだと思いますが、理事長の赤松さんはどのように学習されてきましたか?

――もちろん0からのスタートでした。全く知識がなかったのでインターネットや専門書をたくさん読み、独学で勉強を始めました。その後、知人の紹介などで福祉系のセミナーに参加したり、大学の先生とお話しする機会をいただいたりして少しずつ理解を深めています。その中で、美容室に適した方法や理論を取り入れて自分なりの「スマイルカット」を行います。

 

「スマイルカット」を通し、

さらに活気づく美容室へ

・「スマイルカット」を行うことで、日々のサロンワークに変化はありましたか?

――美容室はもちろんのこと、自宅や施設へ伺う訪問カットも行っています。「スマイルカット」を通し多くの子どもたちと出会い、ヘアカットすることが増えていくことで美容室の情報が保護者さんを通して口コミで広がっていきました。お客さまが増えただけでなく、子どもたちの笑顔があふれる美容室となりましたね。

 

・子どものカットに苦手意識を持つ美容師さんが、サロンワークですぐに実践できることはあるのでしょうか?

――子どもの苦手な美容師さんはたくさんいらっしゃるかと思います。ただ、子どもはとても敏感であり、大人の「苦手だな」という気持ちは伝わってしまうものです。まずは子どもがお店に入ってきたときに腰を落とし、まっすぐに目を見て笑顔で挨拶してあげてください。そして少しだけで良いのでスキンシップの時間をつくってください。そうすることで子どもたちは安心感から心を開き、信頼関係を築く最初のステップが踏めるはずです。

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「スマイルカット」の

これからの課題

・営業中のお店でカットできたら「スマイルカット」卒業ということですが、卒業される子どもたちをみてどのようなお気持ちになりますか?

――カットがまったく出来ないところからスタートして卒業した子どもたちは、現在で15名です。他店で断られ、来店初日にカットすることできた子どもたちを含めると100名以上。カットがまったく出来ないところからスタートした子どもたちは、髪一本さえも切るのを嫌がります。お店にも入れず、ヘアカットを拒否していた子どもたちの出来ることが徐々に増え、一人で椅子に座り、笑顔を見せてくれた時は感動のあまり鳥肌が立つほどです。サロンワークでは味わえない深い感動ではないでしょうか。

・「スマイルカット」を卒業された子どもたち向けの活動は考えていますか?

――卒業後にもお店には定期的に通ってもらっています。バリカンやシャンプーとできることを少しずつ増やし、またいろいろな髪形にチャレンジできるように練習していきます。担当スタッフが変わっても、そしてどんなお店でカットしても同じような状況で切れるようになることが目標です。そのため、卒業後にどうつないでいくかがこれからの課題でもあります。遠方よりはるばる何時間もかけて来てくださる親子もいますので、負担を減らしたいという想いもあり、自宅近くの理美容室でも当たり前に受け入れてもらえるように環境を変えていきたいと思っています。

 

 

美容師という仕事が

もっとやりがいのある職業へ

・「スマイルカット」が美容業界にもたらす影響はどのようなものであるとお考えですか?

――どの業界でも発達障がい児の受け入れに十分な理解・態勢が整っているとは言いがたい状況です。それぞれのプロが理解し立ち上がれば、誰もが住みやすいやさしい世の中になると考えています。医療や食、生きるために緊急に必要な分野と比べると、理美容業界は二の次かもしれません。だからこそ、かっこよく美しくなることで心の余裕を生み出し、人が人として誇りをもって生きていくために大切な業界である、とそう強く思っています。「スマイルカット」が理美容業界に広がることで、あらゆる人にやさしい業界に、また理美容師側にも社会に役立っているという実感が増し、よりやりがいを感じられる職業になるのではないでしょうか。理美容に関わる根本的な意味を考えさせられることだと思います。

・最後に、記事を読まれる皆さんに向けてメッセージをお願いします。

――「スマイルカット」は特別なヘアカット法ではありません。発達障がいという少し個性をもった子どもたち達に笑顔で、どうぞ!って迎えてあげられること。切れなくても嫌がっても大丈夫だよ!って言ってあげられること。嫌がる理由を一緒に考えてあげられること。それだけでいいのです。全国の理美容師さんにこの想いが広まったとき、私達の活動は成功に終わります。理美容業界から、変えてみませんか?心のバリアのない、やさしい社会になりますように。

 

 現在は京都に4名の他、都市部を中心に「スマイルカット」は広まりを見せている。だがさらに多くの理美容師の力が加われば、また違った世界が見えるはずだ。

 

~Another Story~

子どもたち全員が笑顔になれる

美容師による「ヘアカット絵本」

「そらいろプロジェクト京都」に取材をしてから約2カ月半。カットの好きな子どもたちを増やすため、そして親子で一緒に育つ絵本として、「そらいろプロジェクト京都」から『ピースマンのチョキチョキなんてこわくない!』が刊行された。カットを頑なに嫌がる子どもがヒーローであるピースマンと出会い、次第に心を開いていく。そして、今まで嫌がっていたカットができるようになることで、自信をつけていくというストーリーだ。

 著者はもちろん、そらいろプロジェクト京都の代表である赤松隆滋さん。発達障がいの子どもたちに「カットに対する抵抗感をなくしてほしい。悪い子なんてひとりもいないんだよ」という子どもたちの言葉にならない心の声に目を向けた、赤松さんの温かい想いが込められている。

 絵と言葉で伝える、美容師による「子どものためのヘアカット絵本」。すべての親子が楽しめるだけでなく、この1冊の絵本を手に取った理美容師の意識を変えるきっかけになるかもしれない。

絵本表紙画像

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