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フィリピンの施設でカットを学んできた少女たち(ハサミノチカラInterview/前編)

インタビュー

2017.06.13.Tue

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5月22日、月曜日。
住田美容専門学校で、たった3人の生徒のための「卒業式」が行われた。
その生徒とは、さまざまな事情で家族と暮らせなくなった子どもたちが暮らすフィリピンの施設で、カットを学んできた少女たち。
カット技術――「ハサミノチカラ」で彼女たちに「明日を生きる力を」。
7年間に渡り、中心となって活動してきた北原義紀さん(SORA代表/東京都目黒区)に、これまでの経緯と想いを聞いた。

 

ボランティアとは「一部のスゴイ人たちのモノ」だと思ってた

 

―フィリピンの孤児院で、子どもたちにカット技術を教えるという職業支援。

始められたきっかけを教えてください。

 

北原:お客さまのご縁で「エコミスモ(※NPO法人アクションが手掛けるフェアトレード商品のブランド)」の展示会におじゃましたとき、代表の横田さん(NPO法人アクション代表 横田 宗さん)に、偶然お会いしたのがすべての始まりです。

 

―元々海外ボランティアに対する関心があったのですか?

 

北原:いえ、ボランティアそのものに特段強い意識は向けていませんでした。

無償で困っている人のために働くというのは、一部のスゴイ人……ヒーローみたいな人たちがやるものだと思っていたので……。

本当に偶然、横田さんとお会いして、どうしてそんな活動をしているのかとお聞きしたんですね。

横田さんってね、高校生のときに「被災した人(※ピナツボ火山噴火・1994年)のために何かしたい!」と単身フィリピンに渡ったことをきっかけに、お金も人脈もない状態からたくさんのオトナを巻き込んで、被災地支援を始めた方なんですよ。

それで、今の「どんな環境でも子どもたちが等しくチャレンジできるための支援」をするNPO設立にまで至っている。なんていう行動力だろう、と。

次の瞬間には、彼に「僕に、何かできることはありませんか?」と聞いていました。

その一言が、すべての始まりでした。

 

 

4人の美容師とフィリピンで「髪を切る」

 

―そうすると、横田さんは何と?

 

北原:「子どもたちの、髪を切ってあげてください」と。

これも偶然なのですが、横田さんは8~9年間、ずっと美容師を探していたのだそうです。

 

―最初は職業訓練アカデミーでなく、ボランティアカットだったんですね。

 

北原:はい。

横田さんが支援する貧困地域や孤児院では、髪を切るというのは「伸びたモノを切る」ことであり、

そこにお金をかける発想はないんですね。家にあるバリカンやハサミでザクザクと切り落としていく。

衛生行為。

それを、富裕層と同じように装飾行為としての“美容”を経験してほしい、と。

ぜひやりたいとお答えし渡航の準備やメンバー集めに奔走しました。

6カ月後の2011年4月、4人の仲間と一緒に第1回目のツアーでフィリピンに渡りました。

 

―横田さんと同じく、正に「アクション」ですね。

 

北原:そうですね。

やはり約1週間現場をあけて渡航するというのは、美容室という商売の特性上かなりリスキーです。

それでも、やる!ということしか思わなかったですね。

 

―そのアクションが、7年続いて1つの実を結びました。

この行動力を支え続けたのは何だったのでしょう?

 

北原:なんでしょうね……。

本来持っていたボランティアに対するイメージのように「誰かのため」といった気持ちよりも、

自分のためにやりたいと思ったからでしょうか。

すごく個人的なことで、ちょうど横田さんに会った頃は父が他界したあとでした。

父は理容師で、僕にとって美容の世界、髪を切る職業に就くきっかけにもなった人なので、彼を見送ったことで「理由」とか「目的」を1つ失ったようなときだったんですね。

「髪を切る」意味を、求めていたのだと思います。

 

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技術で、デザインで選ばれるという経験

 

―いざ、第1回目の渡航。どんなことを感じられましたか。

 

北原:「これは、想像以上にシビアだぞ」という驚きと緊張感です!

盲ろう学校や孤児院をまわって、貧困地域の集落も訪れて髪を切っていくのですが。

今思えば、みんな少なからず心のどこかに「髪を切りに行ってあげている」と思ってるんですよ。上から目線とかおごりではなく、ボランティアである以上“与える気持ち”というか。

それがね、1人、また1人と切り上げていくうちに、なくなっていくのを感じました。

 

―それはなぜですか?

 

北原:いわゆる「ジャパニーズヘアドレッサー」がわざわざ来ているからと言ってね、たとえばカウンセリング1つとっても「Up to you!(おまかせ)」ではないわけですよ。

オーダーはヘアカタを持って行って聞いていくやり方だったのですが、前に切った家族や友達のスタイルを見て、それがカワイイと思ったら「アレにして!」と言われる。

切っている間、4人の前には順番を待つ列ができているんですが、待っている列から仕上がったスタイルを見て「カワイイ」と思うとその美容師の列に並び直したり!

 

 

―それはシビアですね! 純粋に実力だけで「選ばれる」という経験。

 

北原:何年振りだろうなと思いましたね、こんな緊張感。でも、楽しい。

一緒に行ったメンバーは全員D.D.A.(DADA Design Academy ※DADA CuBiCが主宰するカットアカデミー)卒業生で「腕に覚えあり」のベテランばかり。

それぞれオーナースタイリストだったりと、「誰かわからない中」で選ばれる経験は久しぶりで新鮮でした。

技術者デビューして新規入客して、とにかく目の前のお客さまにリピートしてもらいたい一心で一生懸命デザインしていたあの頃を思い出しました。

 

IMG_7521

 

ハサミノチカラは世界共通

―日本も、フィリピンも。誰しも「かわいくなりたい」「カッコよくありたい」気持ち、それによる喜びは変わらないんですね。

 

北原:本当にそう。

僕たち美容師だけでなく、そばで見ていた横田さんが

「髪を切る行為の持つパワーは想像以上だった」

と言ってくれたことは、何よりうれしかったですね。

そこで、このプロジェクト名が「ハサミノチカラ」になったんです。

 

―1回目のツアーは大成功、といったところですね。

 

北原:無理をしてでも行ってよかったと思います。

そこから回を重ねるうちに、少しずつ心境が変わってはいくのですが……

 

―心境の変化……。

 

北原:はい。ちょっとずつ膨らんでいく“違和感”と向き合いながら、活動を見直し始めました。

 

(後編に続く)

 

***

 

《後編》

『NPO法人アクションと北原義紀さんのカット教育プロジェクト(ハサミノチカラInterview/後編)』は、6月19日(月)更新予定です。

 

▶NPO法人 アクション

http://actionman.jp/

▶ハサミノチカラアカデミーのあゆみ

https://www.youtube.com/watch?v=4ugxbO18m3Y

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