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悩める新人アシスタントさんへ!
本屋さんがあなたにぴったりの本を教えてくれる『本の処方箋』に密着

取材

2019.05.07.Tue

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長すぎるゴールデンウイークも終わり、新しい環境にもやっと慣れてきた頃。一息ついたところで疲れを感じたり、悩みが出てきたりという新人アシスタントさんも多いのではないでしょうか。職場でのお悩み解決には、美容師向けのセミナーや講習に参加するのが一般的かもしれませんが、WEBZINE編集部は、業界をちょっと離れたアプローチに注目しました。

 

今回取材したのは、おもに若い人向けのユニークな本屋の運営やプロデュースを手掛けつつ、学生のキャリア相談を受けてきた西田卓司さんの「本の処方箋」という企画。西田さんが、お悩みやもやもやした気持ちを聴く中で浮かんだ「何かヒントになりそうな本」を3冊、お薬代わりに処方してくれます。

これまで、ブックイベントなどを通して全国で問診されてきた西田さん。本日の患者さん(?)は、渋谷の美容室「LECO」で今年4月からアシスタントを務める重水桃夏(しげみずももか)さんです。

まずは、重水さんに問診表をお渡し。一体どんなお悩みを抱えているのでしょうか…?

 

重水さんの症状(お悩み)

①自分がLECOの一員としてふさわしい器や技術があるのかどうか。

②先輩になったとき、後輩のモチベーションや技術を押し上げられるかどうか。

 

西田:あれ、「仕事つらい」とか「先輩が怖い」とか、そういう悩みじゃないの? こんなレベル高い悩みに合わせた本選べるかな…(苦笑)。

困惑する西田さんですが、早速問診スタート! 重水さんの思いや経歴をじっくりヒアリングします。

 

複業もOK! 人気美容室の看板の重み……

西田:なんで、LECOで働きたかったんですか?

重水:在学中、OBだったオーナーの内田が来校したときにヘアショーが開かれたんです。ヘアショーで私もモデルをさせてもらって、雰囲気にひかれたのがきっかけですね。それ以来、オーナーに施術をしてもらうようになり、LECOが新卒を採用すると知って応募しました。同期は私含めて3人いますが、応募自体は200人を軽く超えていたと聞いて…。

西田:その倍率はちょっとプレッシャーだね。

重水:そうなんです。選ばれたからには内田や先輩から「LECOにいてくれてよかった」と思ってもらいたいし、オーナーは美容業界でも有名人なので、オーナーを知っている方にもがっかりされたくない。

 

西田:選ばれたのはすごいけど、確かに重い…(苦笑)。ちなみに、最近は本読みましたか?

重水:実は、LECOに内定が決まった後、内田から「本を2冊読んで」という課題が出たんです。「君の名前で僕を呼んで」は映画化されて気になっているので選びました。ランボーの詩集は、昔、難しすぎて読めなかった「地獄の季節」という小説が頭に残っていて、同じ作者でも詩集なら読めるかなと。

 

西田:え~! LECOすごい。カルチャーを大事にしてる感じがするね。

重水:そうなんです。私がほめるのもあれですが(苦笑)、美容師はいろんな文化に触れるって方針があって、仕事終わりに、スタッフみんなで音楽を聴きながら雑談したりします。室内には音楽や動画がずっと流れていて、お店に写真集やレコードも置かれています。あと、有給休暇を使った副業も認められているんです。

 

西田:へぇ、重水さんは副業してるの?

重水:今年4月から働きだしたのでまだですが、もともと服をつくるのが好きで、オーナーのヘアショーや撮影用の衣装をつくる機会をもらっています。よく日暮里で生地を買い込んでおいて、後々「あんなの買ったなぁ」と衣装づくりに生かしてますね。

 

想定外のしっかり者ならではのお悩み相談

西田:もう一つの、後輩が入ってきたらっていう悩みだけど…。

重水:LECOの一員としてふさわしいかという悩みと近いんですが、先輩の指導を受けているときにふと「一年後、自分はこんな風にできるのかな」と考えてしまいます。

 

西田:重水さんは、視点がガラッと変わるところが面白くて素敵だと思う。内田さんだったらどう思うか、内田さんの知り合いが自分を見たら、自分が先輩になったら…そんな風に視点の移動ができる人は大丈夫です。

重水:そうだったらいいな…でも、その時が来ちゃったらなんとかしないと。とは思います。

 

西田:本当に20歳!? そのしっかり者感はなんだろう、学生時代って何してましたか?

重水:中学時代はソフトボールに打ち込んでキャッチャーやってました。美容師を目指すことは昔から決めていたのでそれまでは別のことをしたくて、舞台芸術科のある公立高校に進みました。習い事もたくさんしていましたが、ピアノも茶道もクラシックバレエもモダンダンスも…なかなか稽古が厳しいものばかり。根性はついた気がします。

西田:しっかり者の理由がわかった気がする(笑)。視点を変えて考えるのも、演劇経験者だからかなぁ。全体を見ないと演じられないもんね。もっと話したいけど、そろそろ処方しないと。

 

おもむろに本を取り出す西田さん。30冊ほどの本の中から、重水さんのお悩みによりそう本を探します。

 

30分のヒアリングを経て『処方箋』お出しします!

西田:しっかり者ならではのプレッシャーを少し軽くできたら…まずは『計画と無計画のあいだ』という本を処方します。自由が丘の「ミシマ社」という出版社の立ち上げから5年間のエピソードなんだけど、とにかく苦労続き。でも現にミシマ社は生き残っているし、勇気をもらえるので読むと「なんとかなる」って思えるはず。

 

次は『ホスピタルクラウン』。僕が著者をすごく好きになって、この本を売りたいと思っちゃった。100冊仕入れたのに最初38冊しか売れなくて…余談だけど、この在庫を売らないといけなくなったことが、僕が本屋になったきっかけです(笑)。

「ホスピタルクラウン」っていう道化師でもある著者が、病気で長期入院中の子どもに何か芸を見せたり、一緒に遊んだりするお話なんだけど、目の前の子どもが今どんな状態にあるかを見つめる彼の姿が美容師さんとも重なる気がします。

重水さんは心配ないけど、美容師が天職だと思って働きだしてもあっさり転職する若者が多いって聞きました。ほとんどの人にとって、天職って選ぶものじゃないと思う。目の前の人、目の前のことを大事にするうちにたどり着く瞬間のことを天職と呼ぶんだと、この本から感じてもらえると思います。

 

あともう一冊は『道のむこう』という写真集。

重水:あ、好きですこれ!! 写真集も普段からよく見るので。

 

西田:道の先が見えない写真ばっかり集めた写真集。この先、何があるんだろうって想像すると元気になると思う。

 

もうひとつ、重水さんには感性豊かな美容師になってほしいから『月3万円ビジネス』を。月に3万円しか稼いじゃいけない小商いをすると、人間の幅が広がるし、一つの仕事に専念している時とは違う心の余裕ができると思う。

重水:LECOには、サロンワークだけでなくグラフィックデザインも手掛ける先輩がいます。ヘアデザインに直結しなくても「好きなことに取り組んでセンスを磨いてほしい」と内田からも言われているので、私もいつかやってみたいです。

 

西田:とっくに3冊超えちゃったけど、最後に日本画家の千住博さんが書かれた『わたしが芸術について語るなら』を処方しますね。美容師の仕事も服作りも、目の前にないものをイメージして生み出すという共通点があるので、何かヒントになるかもしれません。言葉もキレイなのでぜひ。

 

話が盛り上がるにつれ、処方された本は5冊に! お茶をいただきながら一息ついて、最後に重水さんと西田さんに感想をうかがいました。

 

重水:今日西田さんに処方してもらった本は、本屋さんに行っても手に取らないものばかりだったと思います。この本を読んで、私が何を感じ取れるのかが楽しみです。

 

西田:そうなんですよね。例えば、さっき話した『ホスピタルクラウン』は、本屋さんによっては医療の棚にあるからきっと見つけられないよね(苦笑)。

僕は、本を読むことで「だからあのとき上手くいかなかったんだ…」とか「これでよかったんだ」と自分の中のモヤモヤが言語化されるのがうれしいし、次に進む力をもらえる気がします。今回の処方本が、重水さんにとって何か気付きになったらうれしいです。まずは本業だと思いますが、月3万円ビジネスも楽しみにしてます!!

 

西田卓司さん

現代美術家/余白デザイナー

1974年千葉県出身。1999年、新潟大学農学部在学中に「畑はコミュニティの拠点になる」と直感し、「まきどき村」を設立。並行してサンクチュアリ出版の地方書店営業を行い、魅力的な本屋に数多く出会う。2011年新潟市西区に「ジブン発掘本屋 ツルハシブックス」を開店。2015年東京・練馬で「暗やみ本屋ハックツ」活動開始。2018年福岡県福津市などで「かえるライブラリー」プロジェクトを始めるなど、各地で本のある空間をプロデュース。

nishidatakuji@gmail.com

 

重水桃夏さん

LECOアシスタント

国際文化理容美容専門学校 国分寺校卒業後、内田聡一郎氏が渋谷に立ち上げたサロン「LECO」で2019年4月よりアシスタントとして勤務。

 


取材協力:東向島珈琲店

文:岡島 梓

撮影:石橋俊治(プードル写真事務所トーキョー)

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