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環境整備で実現する美容室の「真の働き方改革」

取材

2019.05.16.Thu

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2018年2月、一般社団法人日本そうじ協会が主催する「掃除大賞2018」で大賞に輝いた株式会社F.PARADE。現在、4店舗のサロン経営だけでなく、飲食店の経営やアパレル事業への展開など拡大を続けています。

F.PARADEが掃除大賞に選ばれた理由は、整理整頓・清掃を中心とした「環境整備」で業務の効率化を進め、スタッフの残業時間減と定休日年間100日以上を実現したこと。さらに売上アップも同時達成したためです。労働環境を整えながら売上を上げるという難しい課題に取り組む姿勢も高く評価されました。

その実績を買われ、2019年からは掃除大賞の実行委員長を務めているのがF.PARADEの長谷川竜太社長。今回は、環境整備で実現してきた社内の「働き方改革」について伺いました。

 

環境整備を通して、美容師の働く環境も見直せる

―今年からは「掃除大賞」の運営側に回られたんですね!

長谷川:そうなんです、結構大変なんですよ(笑)。応募企業のエントリーシートを読んではプレゼンテーションのアドバイスをしたり…。でも、他社の取り組みや異業種の現状を知れて勉強になります。

F.PARADEは、2014年11月に僕が「掃除道講座」に通い始めたのをきっかけに環境整備に取り組んでいます。当社は、6S(整理・整頓・清掃・清潔・仕組・習慣)という方針を定めて実施していますが、環境整備を通して僕自身さまざまな経営者と出会いました。業界を超えたつながりから、サービス業の慣例が本当に社員やお客さまのためになっているのかを考え直す機会をもらっている気がします。

 

―異業種の経営者と関わる中で、どんな気付きがありましたか?

長谷川:他業界と比べ、サービス業は時間外労働が多く休日は少ない傾向にあります。中でも美容業界は、その労働環境を疑ってこなかった。どんな業界であってもプライベートが充実していればいい仕事ができるはずだと思ったので、まずは残業時間を減らしました。環境整備は、空間を整えるだけではなく業務を効率化できます。例えば、当社は3定(定位置、定品、定量管理)を徹底しています。モノの置き場所を決めることで、どこに何があるか一目でわかる。ボールペンならこの種類でこの数だけ店に置くと決めておけば、発注時に迷わないし無駄な発注も防げます。管理も楽になって時間の節約になるんです。

他にも、これは効率化になる!とスタッフが感じた方法は、Facebookを使って全店に水平展開しています。

―もう一つの課題、休日確保のためにどんなことをされましたか?

長谷川:月・火の完全週休2日制を実現するため、月・火に来店される客数を把握し、お客様に週休2日の必要性を説明しました当時、月・火の来店数はグループ全体で年間2,000名ほど。試算の結果、そのうち60%のお客さまが他の曜日に通ってくだされば営業利益が維持できるとわかりました。

それからは、お客さまに定休日増について真摯に説明しました。スタッフの充電がサービス向上につながることを理解してくださる方が多く、予想を超える92%のお客様が残ってくれたんです。休日を増やしても経営が成り立つと数字上で確かめられましたし、多くのお客さまが都合をつけて引き続き通ってくださった事実は、スタッフの働き甲斐も支えてくれたと思います。

 

本当の働き方改革は、スタッフの考え方の変革から始まる

―「環境整備」を進めたことで、社内の変化を感じることはありますか?

長谷川:一番の変化は「いいものだけを残す」という考え方がスタッフに浸透してきたことだと思いますね。空間を整え、効率的に働くには必要なものが絞り込まれてきます。スタッフ自身も「自分だけが持つ、いいものは何?」と問いかけ続けることで成長しているのだと思います。

-「環境整備」に取り組もうとして、スタッフから反対されませんでしたか?

長谷川:大きく反対されたことはなかったです。「お客さまを美しくする場所はキレイで当たり前」という感覚は多くの美容師が共感できるはず。ただ、僕自身が環境整備に取り組むようになったのは、父の「きれいな店はつぶれないから」という言葉に影響されただけで、美容室をキレイにして何が起こるかは正直わからなかった。「掃除したら絶対何かが良くなるから!」って言い続けました(笑)。環境整備で考え方も働き方も変わるんだと、スタッフも実感してくれているのかもしれません。

-環境整備を続けるための工夫はありますか?

長谷川:日々、スタッフの行動や空間の状態にいいところを見つけて声をかけています。実は、2018年に掃除大賞をいただいてからのモチベーション維持には悩んでいました。わかりやすい目標を達成して再確認したのは「ひとつのエクセレントより、いっぱいのいいね!」の大切さ。僕だけが頑張っても環境整備は続かない。みんなの、淡々とした小さな取り組みが大事なんです。声掛けするときも「今日、椅子すごい光ってるね」とか、事実そのものに注目します。今の状態がいいね!と事実を伝えるだけで、そのレベルを維持したくなるのが人間。むやみに感謝したり、度を超えたべた褒めはすぐ馴れちゃいますよね(苦笑)。

-環境整備を通して働き方が変わってきた今、チャレンジしたいことはありますか?

長谷川:この先はグループ全体で年間売上10億円を目指したいですね。その一環として、海外で勝負できるような体制をつくりたい。環境整備と良い接遇は海外でも武器になると思うんです。当社からも人材を現地に派遣し、海外の美容師も日本にある当社の美容室で働いたり…そんな交流が生まれる場をつくっていきたいです。

 

日々の環境整備が、若手の成長にもつながっている

続いて、株式会社F.PARADEが2018年12月、五反田にオープンさせた美容室EREMENTの店長、山田 陽(きよし)さんに環境整備で生まれた現場の変化について伺いました。

-環境整備につながる、清掃や整頓のこだわりを教えてください。

山田:EREMENTは金属と木材を組み合わせたスタイリッシュな空間なので、ステンレス部分が光るくらい重点的に磨きます。ピカールという薬剤を使うことが多いですね。当社では、掃除用具や薬剤を「武器」、ごみやほこりを「敵」と呼んで常に戦っています(笑)。店販商品もオープンな棚に並んでいますが、ほこりを払わずそのままお渡しできるくらいキレイです。

あと、椅子をまっすぐ並べる「直線運動」は朝の大事な仕事。ピシッと引き締まった空間でお客さまを迎えたいという思いで続けています。

-環境整備で得られる効果はどんなところに感じますか?

山田:ものを探す時間が減るので作業効率が上がりますし、誰かに質問せず自分でできることが増えるので、人の時間も無駄にしなくなります。

人材育成の効果もあると思いますね。各店舗に「環境整備リーダー」がいますが、あえて入社1、2年目のスタッフに任せることも。環境整備に関しては店長以上に権限を持つ重要なポジションなので、スタッフのリーダーシップ育成に役立っていると感じます。

 

働き方が変われば、お酒もおいしいしスタッフ同士も仲良くなる!

-環境整備を、より効果的におこなうコツはありますか?

山田:毎月、環境整備リーダーと各店の代表で状況をチェックして、来月の改善目標を立てます。そのとき使うのがチェックシート。チェックシートのいいところは、誰が見ても点数の高低で改善点がわかること。さらに、チェック項目を意識すると誰でも一定以上のクオリティを保った行動をとれるようになります。もうひとつは、若手の意見も取り入れてボトムアップの改善提案を意識しています。店に入って日が浅いスタッフだからこそ気付けることもたくさんあるので、その意味でも、環境整備リーダーを若手に任せるのはいいのかもしれません。

-山田さんが入社された7年前から、変わったことはありますか?

山田:週休2日になったことと残業が減ったことは大きな変化だと思います。以前は、休日にモデルハントをしていましたが、今は、インスタグラムでモデル募集をしたりと仕組みを変えて対応しています。あと、2日連続で休めると思うと…お酒がおいしいんですよ(笑)。心置きなく飲んでも仕事に支障がでないと思うと(笑)。

もうひとつ、自主練を行う場合は朝だけにしました。夜は疲れもあって、練習しても効率が悪かったのでやめてよかったと思います。

-逆に、これからも守りたいものはありますか?

山田:個人的に気に入っている、始業前と終業後にスタッフみんなと握手して挨拶する習慣。手を握るときに目を見るので、その時の体調や気持ちもなんとなく感じとれて、お互いを思いやって働ける気がします。あとは、スタッフの仲の良さはこれからも守っていきたいです。プライベートな時間が増えた分、今まで以上にグループ内のスタッフともコミュニケーションを増やしたいと思います。

単なる掃除や整理整頓ではなく、スタッフの働き方や考え方を変える力を持っている環境整備。本当の働き方改革は、休日が増えて残業が減るという結果だけを追うのではなく、スタッフの意識変革をうながすことで実現に近付くのではないか。どこもピカピカに磨き上げられたF.PARADEの店内を見回して、そんなことを思いました。


文:岡島 梓

撮影:根津佐和子(https://www.instagram.com/lilgraph/?hl=ja

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