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大事なお客さまががんになったとき あなたのサロンは支えられますか

その他

2019.08.05.Mon

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乳がんや大腸がんなど、現在がんは2人に1人がなるという身近にある病気。

元気に美容室へ来店しているお客さまや、サロンのスタッフなど身近な人から、突然がんであることを告白されるかもしれません。皆さん受け止める体制は整っていますか?

今年4月、愛知県名古屋市でがん治療に伴う脱毛に対処しようと、医療用ウイッグを購入するがん患者さんに購入代金の一部を交付する制度が認可されました。7月8日ウイッグメーカー・フェザー㈱は名古屋市の美容あいち会館で、この助成金はどのような制度か、また医療用ウイッグを必要としている方へサロンで何ができるかを伝えるセミナーを開催しました。

セミナーではがんの知識やり患された方の心理、どの様に接すればよいのかなど美容師に必要な知識と行動を、一般社団法人リボネットの奥園清香さん、美容室アトリエ・リリーの石黒智恵さんが語りました。会場には約50名の美容師が集まり、美の追求にスポットが当たりがちな美容室経営における“もうひとつの美”について名古屋市とサロンの取り組みが紹介されました。

 

がん告知を受けた人の心の状態は?

乳がんは、11人に1人がり患すると言われています。特に女性にとって、治療時の脱毛の心理的負担は計り知れないものがあります。通い慣れた美容室の親しい美容師に脱毛の相談ができれば、どんなに安心できるでしょうか。

がん患者さんの多くは、り患した現実への拒絶→怒り→もがき→絶望→受容という心境の変化を経験します。お客さまが「今一番困っていること」を聴き、心に寄り添い、しっかりと理解しようとする姿勢が美容師には大切です。がんをきっかけにサロンを離れてしまわないように、生涯美容師として見守る姿勢がお客さまの笑顔につながります。

 

闘病中のがん患者さんを美容で支える

リボネット(愛知県)の活動

セミナーに協賛した一般社団法人リボネットは、2013年からがん患者さんをサポートする美容師の育成を目的に活動しています。その理事である奥園さんは、美容室が医療と美容をつなげる場としてがん患者さんをサポートできるのではないかと考え、リボネットを設立しました。

現在は法人8社、美容師54名が会員登録し、がんの知識やウイッグの取り扱い方、カウンセリングについて勉強する会を年4回開催しています。がん患者さんを生涯顧客としてあたたかく受け止め、相談できる美容師が近くにいると気づいてもらおうと「ピンクリボンの会」と連携したイベントなどさまざまな活動もしています。このたび名古屋市で認可された医療用ウイッグ助成金は、より多くの美容師の知見を広めると同時に、名古屋市以外でも認可されるように働きかけたいと奥園さんは決意を語りました。

リボネットは利益追求の組織ではなく、ボランティアで運用されるものでもありません。リボネット会員・美容師の勉強会や講演会は、会員の会費(年会費・入会金)、メーカー・ディーラー協賛のサポート、寄付のみで運営されています。

 

がん経験者が立ち上げた美容室アトリエ・リリー

今では、90%のお客さまががん患者さん

自らがんを乗り越え、美容師として多くのがん患者さんと接している石黒智恵さん。

18歳から約5年間美容師の経験を積み、出産後はウイッグメーカーで百貨店の販売員として活躍していました。そんな折、乳がんをり患。乳房を全摘手術後、がん患者さんがウイッグを必要とするときだけでなく、頭髪が生えてきたあとの美容ケアにも関わりたいという気持ちが強くなり、愛知県岡崎市に美容室アトリエ・リリーを開業しました。

現在、毎月約200名の来店があり、その90%ががん患者さんで脱毛やウイッグの相談をされます。アトリエ・リリーに訪れる理由の多くは、がんを経験し、脱毛に理解のある石黒さんがいるから。脱毛後は、ヘアスタイルを美しくしようと通っていた今までの美容室には用が無いように感じられ、行けなくなってしまいます。心を閉ざし気味になりやすいがん患者さんには、既に十分頑張っているのだから「頑張って」といった励ましの言葉や、医師以外からの「大丈夫」など、言われたくない言葉を口にしてしまう美容師は多いのです。

「経験がなければわからないこと。でも、それでいいんです。ただ、貴方がずっと自分のお客さまでいて欲しいという想いを話してください」(石黒さん)。

治療の過程で脱毛が起こり、医療用ウイッグが必要になったお客さまの気持ちを真摯に受け止め、どのようなウイッグが似合うか提案するのが美容師にできること。多くのがん患者さんは、脱毛前の自分とあまり変わらない、他人にウイッグだと気づかれないものを好む傾向があるそう。その気持ちを踏まえて、目の色や顔にフィットするウイッグを提供しなければなりません。ウイッグはネットの形状や髪質など種類が豊富にあるため、お客さまの悩みに合った提案ができます。

アトリエ・リリーではウイッグを長く使ってもらい、毎日快適に過ごしてもらうために毎月無料でウイッグの手入れを行っています。美容師もがん治療による脱毛相談を受けたときを想定して、積極的にウイッグを触り、ボリューム感や質感などの違いを知っておくことが大切と石黒さんは提案します。

ちなみに昨年販売した105台の医療用ウイッグの80%がフェザー社の物。理由は、使用しているうちに患者さんの頭にフィットするからだそう。そして何より見た目が自然で、り患前と変わらない印象は患者さんの心の支えになります。

 

医療用ウイッグ助成金とは?

医療用ウイッグ助成金は、治療による脱毛で医療用ウイッグを購入するがん患者さんにウイッグ代金の一部を助成する制度です。

交付条件は、

①認可された地域に住民票を有する方

②がんと診断され、抗がん剤治療などの副作用による脱毛症状によりウイッグが必要な方

③他の制度で同様の助成を受けられない方

助成金制度は各都道府県の市町村毎に申請認可されており、助成金の金額もさまざまです。たとえば、山形県では全市町村で助成金制度があり、金額の上限は2万円(購入費の5割負担)。愛知県は今回セミナーが行われた名古屋市にしか制度がなく(7月8日現在)金額の上限は3万円(購入費の3割負担)とさまざまです。

全国でも7県と42市町でしか認可されておらず、成立には美容師が市町村に訴えることが必要とのこと。

まだ助成金制度が導入されていない地域の美容師も、導入のための活動を考えてみませんか?住んでいる地域で医療用ウイッグ助成金が出ているのか、条件や内容について1人ひとりが調べ、行動することがサポートの1歩です。

●名古屋市医療用ウイッグ助成事業案内

www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000115089.html

 

サロン業界での医療用ウイッグ製品

セミナーを主催したフェザー(株)は医療用ウイッグ『フィットミー』発売しています。通常のウイッグより毛量が多く、全脱毛の人の頭皮が透けないという特徴があります。また、ネットの内側にシリコンを付けて滑りにくくする工夫も。薬の副作用で肌が敏感になっているがん患者さんへ刺激を与えないようにネットの素材を柔らかくするなど、患者目線の工夫がたくさん施されています。

既に助成金制度を利用し医療用ウイッグを使用したお客さまからは、「自分らしさを取り戻し、自信を持って社会に参加出来るようになった」という声が多いそうです。また、助成金は経済的な補助以外に、1人では不安で押し潰されそうなことも誰かが自分の助けになろうとしてくれている安心感があると大変喜ばれています。

がんをり患していても、髪が無くても、美しくありたい思いは変わりません。美容室に行って綺麗に整えられた髪に心躍るのは、どんな状況でも同じはずです。少しでも多くのがん患者さんが“今”の自分を好きになれるよう、助成金制度の導入やウイッグへの理解を通じ、全力でサポートするのが美容師にできることの1つなのでしょう。

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